ここはカニコ島。
この島には昔から語り継がれる伝説があった。
「ギターを極めし者、勇者になれる。空高くよりドラゴンが舞い降り、その背中に乗って自由自在に世界を旅できるだろう。」 と…
カニコ島に住んでいるねこのかゆは、勇者になってドラゴンに乗ることに憧れていました。
伝説はただのおとぎ話だってまわりのみんなは笑っているけれど、かゆは信じていました。
なにより、ギターの音色が大好きでした。
上手に弾けるようになったらどれだけ幸せだろう。
ギターを買うためにかゆはこつこつとカニコシェルを貯めていました。
カニコシェルは島で採れる美しい貝殻。カニコ島の人々はこれを通貨にして生活をしているのです。
202×年 かゆの誕生日。
朝早く起きたかゆは、一生懸命貯めたカニコシェルを、港にあるギルドの窓口で世界共通金貨に両替しに行きました。
「よくこんなにたくさん貯めたね。気をつけて行くんだよ。」
ギルドの受付係に見送られ、
パンパンに膨らんだ袋を抱えて、かゆは島から船に乗って本土にある商人の港へ向かいました。
そこは、カニコ島のような自然豊かなのどかな場所とは違い、
大きな石造りの建物がたくさん並び、馬車とたくさんの人々が行き交う、世界中の珍しい品々が集まる活気あふれた場所でした。
かゆは地図を片手にお目当てのギター屋へと歩き出しました。
事前に地図を見て場所を確かめていた時には港からすぐだと思ったのに、実際歩いてみると思ったより距離がありました。
重い袋を抱えてながらたくさん歩き、少し足が疲れてきたその時、「六弦の聖域」と書かれた古びた看板を見つけました。
「こんにちは」
かゆは少し緊張しながらドアを開けました。カランコロンとベルの音が店内に響き、木の温かな香りがかゆを包み込みました。
お店の店員さんがにっこり微笑んで「いらっしゃいませ。どれでもお好きなギターを試奏してみて良いですよ」と言いました。
たくさん並んだギターの中で、なぜか最初に触れてみたくなったのは、
透明なピックガードと、ボディの色が少し濃い目の茶色の、シンプルなギターでした。
持ってみるとなぜか懐かしい、ずっと前から自分のものだったような感覚がして
弾いてみると、深くて心が落ち着く音がしました。
そのあとにいろいろなギターを試奏してみましたが、最初に触れたギターほどしっくりくるギターはありませんでした。
「これにします」
かゆはギターを買ってカニコ島に帰っていきました。
行きは身軽に一人でギター屋に行ったのに、帰りはギターを持っています。
ずっしりとした大きさと重さも愛しくてかゆはとても嬉しい気持ちでした。
島に着いて、夕陽が綺麗に見える、かゆが一番大好きな場所へギターと共に行きました。
これからギターを練習する日々が始まります。
練習をしていくと指が痛くなったり、難しくてくじけそうになることもあるかもしれない。
けれど、六弦の聖域で出会った、この相棒がいれば、きっと、乗り越えられる。
今日の嬉しくてわくわくしている気持ちをずっと忘れずにいようとかゆは夕陽を見ながら強く思いました。
オレンジ色に染まる海の上を、いつかドラゴンに乗って飛ぶ自分の姿を思い描きながら。
慣れない旅路で指が疲れたら、いつでもこの「ギター絵本」を開いて、ゆっくり羽を休めていってくださいね。






